茨城からプロ棋士を 永作 芳也

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どんな活動をしていますか?

 普段は自分の保険事務所で働いています。市民の皆さんのお困りごとの相談にのったり、アドバイスをしています。そのほかに、「こども将棋教室」も開校しています。家は潮来ですが、教室は生まれ育った行方市や、近隣の神栖市、稲敷市、つくば市にもあります。

はじめたきっかけはなんですか?

 近所のおじいちゃんおばあちゃんから「孫に将棋を教えてほしい」と頼まれたのがきっかけです。というのも私は将棋のプロ棋士“でした”。あえて“でした”というのは、自分から将棋連盟を退会したからなんです。これまでの歴史で、「退会したプロ棋士」というのは私だけだそうですよ。そんなわけで、私のことを知ってくれていたご近所の方が将棋教室を開いてほしいと声をかけてくれました。そのころ、藤井聡太さんのブームが来ていたこともあって将棋が注目されていたんですね。

 小学生のころから子供たちの遊びの中に将棋がありました。将棋に触れるうち、もっと強くなりたいと思い、自分より実力のある近所の大人たちに教えを乞うこともよくありました。自分で本を買って将棋の勉強もしましたよ。知りたいと思ったら自分から動かないとどうしようもないですからね。高校生になって、好きな将棋を極めたい、とプロ棋士を目指すようになりました。でもプロ棋士を目指す人っていうのは小学生のうちから全国大会で優勝して実績を残している人がほとんどなんです。私の場合はプロを目指すようになったのが高校に入ってからとほかの人と比べるとかなり遅いスタートでした。それほど実績を残していたわけではありませんでしたが、意を決し高校を中退してプロ棋士を目指すべく上京しました。もちろんプロになれるという保証は全くない状態です。それでも18歳のときになんとか奨励会(日本将棋連盟のプロ棋士養成機関)に入会することができました。周りには、いわゆる「神童」と呼ばれる子供たちがたくさんいるんです。生まれ持った才能にあふれた人たちに勝つには努力するしかないと、毎日身を削るように勉強しました。自分でも本当に努力したと言えます。そのかいあって24歳で念願のプロ棋士になることができたのですが、プロ8年目の時に羽生善治さんとの対局に敗れて、翌年、自ら将棋連盟を退会する決意をしました。

 そこから30年近く将棋から離れていました。50歳くらいのときに「70歳くらいになったら、将棋を通して地域に貢献できればな」なんて考えてはいたのですが、まさか子供たちに教えるという形で再び将棋に携わることになるとは思ってもみませんでした。

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 子供たちに指導するときの表情はとても柔和です。

「癒されます」という言葉は真意なのだと伝わってきます。

一番大切にしていることはなんですか?

 「のびのび」することです。将棋教室には驚くほどの集中力をもった子供もいれば、じっと座っていられない子供たちもいて十人十色です。将棋に集中して実力を伸ばすことも大事ですが、将棋を指すこと以外にも礼儀作法が非常に重要なんです。将棋の技術と、生きる上での礼儀作法、これらを「のびのび」と学んでほしいと思っています。今の子供たちは私のときとは比べ物にならないくらい様々な習い事をしているようです。将棋教室だけでなく、ピアノ、英会話、武道・・・挙げればきりがありませんが、そんな多忙な子供たちが習い事の一つとして将棋を選んできてくれているわけですから、せめてここではのびのびと過ごしてほしいですよね。将棋に限らず、自分の好きなものを見つけて極めてもらえると嬉しいです。

今後の目標を教えてください

 茨城県からプロ棋士を輩出することです。子供たちには自分の好きなことを極めてほしいといいましたが、やはり地元茨城からプロ棋士が出てくれるといいですよね。茨城県からプロ棋士が出たのは私が最後で、40年近く茨城出身の新しいプロ棋士は生まれていないようです。

 子供たちに将棋を教えるようになって「子供って本当に純粋だな」と強く感じています。将棋を一生懸命学ぶ子もいれば、友達に会いに来る感覚で教室にくる子もいますが、みんな純粋なんです。教えていて、癒されます(笑)。純粋で、なんでもスポンジのように吸収する子供たちには無限の可能性があります。将棋の技術や礼儀作法を一緒に学んで、「将棋って面白いな」と感じる子供が増えてくれると嬉しいですね。そして将棋大好きな子供が将来プロになってくれるともっと嬉しいです。

アピールポイント

 子供たちに将棋を教える時の様子を伺った時の永作さんの柔和な笑顔が印象的でした。保険のお仕事の疲れが将棋教室で吹き飛ぶほど癒されるそうですよ。

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 優しい笑顔の奥には確固たる信念があるような印象を受けました。自分の好きな将棋を押し付けるのではなくてみんなで楽しもうという姿勢が伝わる方でした。茨城県出身のプロ棋士の誕生、楽しみです。

佐藤彩希佐藤彩希(さとうあやき)2018年に潮来市地域おこし協力隊に着任したばかりの札幌出身の私。水戸には3年間住んでいたけれど、潮来に住むのは初めてです。読書、マラソン、バイク…けっこう多趣味です。「潮来行きたいけど、今日混むかなあ?」なんて悩みがあちこちから聞かれるようなまちづくりのお手伝いをしていきます。

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