水郷潮来の地域資源を活かした交流の場・北斎遊学館!! 吉川 利一
どんな活動をしていますか?
潮来市内にある”北斎遊学館”という石蔵を利用した施設があって、そこを拠点に活動しています。
”遊学館”では土曜日曜と朝市を開催しています。
9時から14時まで開けて、お客様のお越しをお待ちしているのですが、野菜や果物といった商品の集荷は朝早くからあります。遊学館で扱っている野菜などを使った炊き込みご飯やピザなどのお惣菜も販売していてスタッフたちを中心に仕込みや調理をやってもらっています。
私もかきもちなど作り、製造者としても名前を連ねています。
もちろん前日までにも準備することはたくさんあって、ある程度日持ちするものなど平日でも運び込んでもらったりします。
一年に一回は商品を提供してくださっている農家さんを集めて会を開き、交流をはかります。
地域とのつながりの中での活動という部分も忘れてはいけません。豆腐店やお茶屋さんなど長年地域に根ざして営まれてきたお店の製品も取り扱っています。
遊学館はコンサートの会場としてもお貸ししています。7、80人ほどを収容できる上に音響も良い空間なので、演奏を行うにも向いているのです。クリスマスコンサートなど毎年の恒例になっているものもあります。
他にもヨガにリトミックにコーラスなどの教室の会場としても活用し、親しんでいただいています。
はじめたきっかけはなんですか?
今”遊学館”として活用している蔵は元々農協に貸していました。
ただフォークリフトが入れない大谷石の蔵ではこれからの時代にそぐわないということで明け渡されることとなりました。
いったんは取り壊して更地にして返すという話になりかかったのですが、大谷石づくりの立派な蔵なので是非とも残しておきたいと伝えました。
これだけの蔵があるからにはただ残すだけでなく、活かさない手はないと思いましたし、個人的に利用するだけでももったいないので活用法を真剣に考えるようになるのですが、そんな時に石蔵をコンサートの会場として使いたいというお話を頂きました。
蔵の中は音響にすぐれたコンサート向きの環境でもあり、演者の方からもお客さんからも好評でした。
一回限りではもったいないという意見もあり、継続的にコンサートを開催するようになるのですが、地域の人たちの集まるひとつの拠点としての可能性をはっきり意識することとなりました。
どういう形の利活用法ならば、ここをもっと活かせるかと考える中でにたどり着いたのが朝市というあり方でした。
地域の食材・素材の中でも格別のものだけをお届けする場として開放して、多くの人の出入りが望めるような拠点にできればと思いました。
農業分野に通じている知合いから、近隣で農家を営む人を紹介していただき、私自身実際におもむいて、見て食べてこれならオススメできると思った作物をいくつか選び、それらを主力の商品とした朝市を形にしようと動き出したことが今につながっています。
一面に広がる北利根川がいつの日もそばにある。それは何よりも強みになるはずだ。風景という貴重な財産がこの場所において最大限に活用されている。
北斎遊学館の二階もカフェスペースとしての展開を見せている。ここならば雨の日であろうと落ち着いてお茶ができることと思う。
一番大切にしていることはなんですか?
仕入れるものの選択は大切ですね。
無農薬農法や微生物農法など、消費者を思いやった作り方による作物をこそ扱いたいと思っています。
他のお店との違いといった部分は常に意識していて、安心・安全を第一に置くことに努めています。
もちろん”味”の方も太鼓判を押せるものだけ扱うようにしていますし、買い求めやすいお値段の実現というところもちゃんと気を配っています。
毎週のように通って来てくださる方の存在はやりがいにつながっています。
無農薬野菜で育てた放し飼い鶏の卵は一般的なものと比べて若干高い価格で、そのためかはじめのころはあまり売れなかったのですが、段々と質の良さが伝わっていったのか手に取って頂ける機会が増え、今では売れ筋の商品になっています。
商品選びへの思いが汲んでいただけたことの証なのではないかと喜ばしく思いました。
今後の目標を教えてください
霞ケ浦の周囲をめぐるルートが中心となっている”つくばりんりんロード”というサイクリングロードがあります。霞ケ浦の水面の先に筑波山を拝むことができ、天気が良い日などは遠く富士まで見通すことができる風景の魅力にあふれたサイクリングロードです。
北利根川を見下ろすことのできる北斎遊学館もまた、そのサイクリングロードの途上に位置していてサイクリストの方々が多く訪れます。
この場所を管理する者としてせっかくの魅力あふれたこの立地を無駄にせずちゃんと活かすことは、何としてでも実現しなければいけないと思ってきました。
まちおこしのためには手間と暇を惜しまず、地域の拠点を盛り立てていきたいですし、それは地域のもつ魅力を活かす形で実現されるのだと思います。
水郷潮来のもつ魅力といえばまずなんといっても気持ちの良い開放的な水辺の景色で、それを売りにしない手はないです。
遊学館の名前の由来にもなっている北斎だったり、川瀬巴水だったりが愛した牛堀の風景を目の前にいだく画になるロケーションの魅力は何をおいてでもアピールしたいところですね。
そのための第一歩として石蔵を会場にしたコンサートから立ち上がったわけですが、そんな北斎遊学館も今では毎週行われる朝市の会場として親しんでいただいています。
リピーターと呼べるような方も100人近くはいて、地域の交流の場になっているという実感はあります。
これからはより一層交流の幅を広げていきたいですから、そのためにもはじめて来た方がリピーターになってくれるような魅力あふれた場所でなければと思います。
良いものの提供はもちろんですが、そこに加えておもてなしの方も拡充しなければなりません。
通りかかったから立ち寄るサイクリストの方は今でもたくさんいます。
ここを目指して来たというわけではない、ここにあったから来たという人たちです。
そうした方たちの満足度をさらに高めて、また来ようという気持ちに自然となってもらえるような”おもてなし”ができないかと思うのです。
自然の魅力にあふれたサイクリングロードをゆくサイクリストたちにとってのオアシス的な場所になることを目指しています。
トイレや水分補給は当たり前として、心身の休まる時間を届けられるよう、スタッフ一同意識をもってお客さんに接しています。
今は循環型社会という言葉をキーワードに、この北斎遊学館も多様な要素を取り入れ、充実した体験を胸に持ち帰ってもらいたいとも思っています。
五感の満足といったところでは、音楽のコンサートを通して聴覚を、美味しいものの香りや味を通じて嗅覚と味覚を、北利根川を望む風景を通して視覚をといった風に、感覚に訴えかけるものを詰め込んでこれからも皆様をお出迎えできればいいです。
今は遊学館前の石窯で焼いたピザや焼き芋などをその場で振る舞うこともしています。2階にテラスも設けたのですが、今後はカフェ営業を行い、滞在するお客様を歓迎できるようととのえていければと思っています。
とびきりの風景を誇る場所でお腹を満たし、忘れられない経験にしていただいて、いつの日かまたこの場所を訪れたいと思っていただければ幸いです。
アピールポイント
気持ちの良い眺めがここにはある。
このテラスがオープンカフェとして、花火大会の観覧席として、ビアガーデンとして活用される未来を館長は思い描いている。
北斎遊学館から眺める北利根川はいつでも穏やかだ。
この健やかな景色の中でお腹を満たすことのできる喜びはそのまま生きる喜びとなるだろう。
日の光に目を細め、水郷情緒を楽しみ、地域の食を味わう。
居心地の良い空間がここにあり、伸びやかな心を育ててくれる。
地域を盛り立てる場所づくりと一口に言っても、そこにかかわる大変さを思えば言い尽くせない部分ばかりだと思う。その場所にあったもの(=蔵)を最大限に活かした拠点づくりが人を呼ぶということはひとつの理想だ。地域の魅力ある産物が地域内外の人をつなぐ場でもある。スタッフさんとのやりとりはあたたかな気持ちをもたらしてくれるし、食材を活かしたおそうざいには食欲を満たされる。館長は素材の良さという部分を強く押し出すけれど、そればかりではなく遊学館の雰囲気あってこそ、こんなにも満たされた気持ちになるのだと私は確信する。その雰囲気は館長の人柄によるところも大きいのだとお話の中で気付かされた。