"あやめ笠"&"しめ縄"!潮来に継がれるべき伝統工芸のこれからを担う! 四ノ宮 巳典
どんな活動をしていますか?
潮来市シルバー人材センターの会員として、潮来の名物である工芸品”あやめ笠”や正月飾りとして用いられる”しめ縄”づくり、販売を行っています。
あやめ笠はい草を編むようにして作る笠です。もともとは農作業の時に使われていたものです。日よけなどに役立ちます。湿気などに気を遣えば10年はもちます。
今では潮来を代表する工芸品として親しまれていて、潮来名物のろ舟に乗船されるお客さんがあやめ笠を着けて遊覧するようすは名物として親しまれています。
”水郷潮来あやめまつり”の会場でのあやめ笠の販売では観光客の方の応対をすることもあります。
しめ縄はお正月の飾りとして親しまれています。東海村のシルバー人材センターで作っているわらを用いて力をこめながらも丁寧な作業でもって形にしていきます。
しめ縄のほかにも米俵の形を模して作る福俵などお正月にぴったりの飾り何種類かあって好評をいただいています。
例年、3月から6月をあやめ笠づくりにあてていて、10月から12月までがしめ縄づくりの期間となっています。
他には「潮来市郷土史研究会」の一員として、月に一度仲間たちと集まることもあります。
1年に一度行う”水郷潮来まちかどギャラリー”での企画展示は、その年の研究の集大成ということでとりわけ力を入れています。
水郷のくらし・文化・歴史を今を生きる人に伝えたくて、会員の仲間たちと知見を深めているところです。
発表の場としては他にも11月の市民文化祭や、年に一度講師の方を招いて行う講演会があり、そこを目標としながら日々の活動に取り組んでいます。
また市内の日の出地区にある古民家”旧所家住宅”の管理の方にも関わっています。
こちらは観光シーズンや文化祭など特別な時に開放しているのですが、市内外からの注目を浴びる場所であり、清掃などの保全活動に参加しています。
潮来市の観光ボランティアのお手伝いにも力を貸しています。
はじめたきっかけはなんですか?
長くハウスメーカーでリフォームに関わる仕事をしていたのですが、震災を機に周辺地域の大工さんが出払ってしまうようになりました。
その結果として仕事量が格段に増え、それはありがたいことではあるのですが、年のこともあってこれでは体がもたないと思い、職を辞すことにしました。
長年続けていた仕事だったので、どこかぽっかりと穴が開いたような気分になったのですが、そんな時シルバー人材センターの会員の方に入会を誘われ、入ってみようと思いました。
会員の中には公民館でのおつとめに従事している人や、家の仕事に追い立てられているなどで、活動への参加があまりできない方もいます。
そんな中でわたし自身はあやめ笠の期間、しめ縄の期間とそれぞれの製作に力を注ぐことができたので、技術をじっくりと身につけるゆとりがありました。
そんな日々の末に今の活動があるのです。
ごぼう締めを手に”つくること”の喜びを語る四ノ宮さん。
あやめまつりの期間中に潮来市シルバー人材センターの方々が、水郷潮来あやめ園にてあやめ笠を販売するようす。
和気あいあいとした雰囲気が伝わります。
一番大切にしていることはなんですか?
もともとものを作ることが好きで、何かを作ることに打ち込んでいると喜びを感じるたちでした。
今はあやめ笠、しめ縄など、じっくりと時間をかけて、ひとつひとつを形にしていく作業ができる環境に身を置いているので充実感があります。
ものづくりは健康にもつながると思っています。
頭をはたらかせて、手を動かすという作業は、良い刺激を与えてくれるのです。
ただ、これらは全部作る側の話で、ものづくりはみんなそうだと思うのですが、買ってくださる方、使ってくださる方をがっかりさせないということがやはり一番です。
あやめ笠を買い求めるという目的のためにわざわざ神奈川の方から潮来まで足を運んでくれる女性がいたり、期待を寄せてくれている人の存在は確かに、その期待にはどうしても応えたいと思います。
使う人あってのものづくりというところは常に大切にしています。
がっかりさせるようなもの、期待を裏切るものは絶対に作りたくないです。
良いものは景気・不景気に関わらず求められるものであり、質の追求は世相をこえると思っています。
そうは言っても、作るほどに改善点が見えてくるということはあって、私にあやめ笠作りを教えてくれた”先生”の作ったものを見ると、自分はまだまだだと思ってしまいます。
作るほどにうまくなるという面も絶対にあって、だからこそ続いているのだし、それはやりがいにもつながっているのです。
今後の目標を教えてください
伝統工芸として作られるものの技を身につけるためには、短くとも3年、上手く作るとなれば10年はかかると言われています。
それだけ続けること、継がれることに意義があるのです。
2017年になり、共にあやめ笠づくりに関わる仲間が何人か去ってしまいました。
2017年度は例年よりも少人数の体制となったので、それこそ少数精鋭で期間もしっかりとって製作したのですが、これからのことを考えると心もとない部分があることも事実です。
楽しめることに人は自然と集まると思っていて、作業する場の雰囲気を楽しく和やかなものにすることは心がけています。
無理だけはさせたくないということで午前・午後などお休みは自由にとっていただるようにして、何よりも続けていきたいと思えるような現場にすることが大事です。
あやめ笠づくり、しめ縄づくりに面白みを見出してくれるような新たな担い手を増やして、誇れる潮来の文化として次代につないでいくことが、今後に向けて必要になるのだと感じています。
アピールポイント
イベントにてあやめ笠作りを行った際のようすです。
難しい一連の作業の中でも比較的取りつきやすい部分を参加者に作っていただくというものだったのですが、それでも皆さん苦戦されて四ノ宮さんの丁寧な指導があってやっと形になるのでした。
あやめ笠を作ることがいかに熟達した技を要するかの証です。
実際に体感してみて改めてその技に感嘆してしまいます。
あやめまつりの季節、あやめ園そばを流れる前川に目を向けたならば、きっと目に入ってくることでしょう。潮来名物"ろ舟" に身をあずけた方たちの頭の上にあやめ笠はかぶせられ、舟の流れるまま潮来のまちなかを行き来します。川風を受けて笠が傾くさまは風情にみちていて、水郷情緒の一端を担っているといっても過言ではありません。もともと農作業の際に日除けとして用いられていた笠も、今では工芸品として作られ、ふるさと納税など市内外の方から大いに好評を呼んでいます。そんなあやめ笠がいま直面している担い手不足の問題とどうやって向き合っていくか…に話が及んだ時見せた四ノ宮さんの表情が忘れられません。ものつくりの面白みを語る時とはまた違う、切実なものを見つめる目が潮来の今まで・今・これからに重なっているように思いました。